「何が!!」

彼はデカイ目を真ん丸に見開いて、テーブルの上に身を乗り出す。俺は吹き出した。

「目、こぼれるよ。ヤッさん」

「早く言え!」

俺は笑いながら言った。

「できたかも。好きな女」

「マジか!! あー」

ヤッさんは椅子に深く腰掛け直すと言った。

「これで安心だ。…いや、安心してる場合じゃないな。詳しく話せ。どこの女だよ」

ヤッさんが、好きな女が出来たという発言くらいでこんなに大げさに喜ぶのには理由がある。俺が複雑な家庭環境に育ったのと、そのせいで屈折した女性遍歴を重ねてきたのを知っているからだ。