「悪い。出られなくて」 ヤッさんがニヤニヤしながら言う。 「女といたんだろ」 俺は答えずに、運ばれてきた鯖の味噌煮に箸を入れる。 「お前なあ。もう34だろ。そろそろ身を固めること考えろよ。俺んとこなんて来月第三子の誕生だぜ?」 「ヤッさんとこは、少子化に貢献してるよな」 「そういう問題じゃねんだよ。惚れた女と家庭を持つ。これが人生の喜びってもんだ。その喜びを、俺はお前にも伝えたくてだな…」 「俺さ」 ヤッさんの目を真っすぐに見ると、言った。 「出来たかも知れない」