『俺は土方歳三
ここの門弟だ』

土方の顔は眉、瞳ともに刃のような形をして整っている
色も白い

『僕は…えへへ…
沖田惣次郎…一応塾頭やってます!』

沖田は土方や源三郎より断然若い
まだ顔に幼さが残っている

『その若さで塾頭…?』

天然理心流にはよほど門弟がいないのか
もしくはこの沖田という子がよほどの腕か…

『惣次郎は、かなり腕の立つ男ですよ
どうです?この塾頭と手合わせをするってのは?』

土方が不適な笑みを浮かべる

山南は土方の思惑には感づいていた
北辰一刀流の看板を売名に使う気だと

『先程も申し上げた通り、私は道場破りではない…近藤先生にお会いしたいだけです』

土方は山南のすぐ前まで詰め寄る

『手合わせも…と言ってたじゃないですか…
塾頭でもいいでしょう?何か問題でも?』

山南は微笑むと土方と一歩距離を取った

『失礼させてもらいます。では』

軽く頭を下げ、後ろを向いたその時だった

『おや、なんか人がたくさんいると思ったら…お客様か?』

体格のいい、勇壮な顔つきをした男が優しい面持ちで立っていた
その相反する表情に、山南は瞬間的に男に恐怖にも似た危機感を感じた