『山南さん…?』

源三郎が山南を呼ぶ
山南はゆっくりと立ち、軽く会釈をする

『若先生は現在私用で出ております
もしよろしければ中へ…』

源三郎が道場内へ手を伸ばし、誘導をする
しかし山南は手を前に出した

『いえ…留守なら結構
近藤先生に会いに、そして都合がよろしければ手合わせ願いたく参っただけですので…』

源三郎は目を丸くした

『あっ…とんだ勘違いを…
てっきり道場破りかと…』

同じく山南も目を丸くする

『いえいえ、滅相もない…
風の噂でこの天然理心流と近藤先生のことを耳にしたもので、興味があって参っただけのこと…
また日を改めます』

源三郎が深く頭を垂れると、その向こうに土方の姿があった

『北辰一刀流が名もない天然理心流に怖じ気づいたのですか?』

土方が山南の方へ歩きながら不敵な笑みを浮かべて言った

源三郎は違う違うと言わんばかりに土方に向け首を横に振っている

『私は事を荒立てに来たのではないのです
近藤先生が留守であれば、改めるまでです』

するとまた後ろから若い男が小走りで向かってきた

『北辰一刀流って聞こえたよ!
道場破り?若先生はいないから僕が相手してあげるよ!』

無邪気に微笑む若い男はかなり若い
若さ故の無謀か、よほど腕が立つのか
山南を見定めぬまま試合をするという

『失礼ですが、お二方は…?』

山南が源三郎に尋ねる