『道場破り?』

男から報告を受けたのは土方だった

『ええ、北辰一刀流の門人だと確かに言っていました…』

『なんでそんな名門がうちの道場に…源さん、間違いないのか?』

源さんと呼ばれた男は言葉なく深く頷いた

男の名は井上源三郎
近藤勇より歳が上で、兄弟子であるが、人のいい性格から、腰が低く、世話役を買って出るため、周囲からは気を遣われないことが多い

土方からも、源さんと愛称で呼ばれ、敬語も遣われていない

『北辰一刀流か…ここは若先生に勝ってもらって天然理心流の名を広める絶好の機会だ
今どこにいる?』

『若先生は私用で出ていますが、そろそろお戻りになるかと…』

『なんとか引き止めておくんだ』

源三郎はコクリと頷き、山南の元へ向かった