暗がりの一室 -

男は凛とした姿勢で
瞼は静かに閉じたまま
その時を待つ

耳に入る音は自らの鼓動
正確に、また落ち着いていて
人生の時を刻んでいる

男は瞼を静かに開き
独り、微笑んだ

『新撰組…間違いなくその名は歴史に刻まれるでしょう…
この混沌とした時代の、巨大なうねりの中で生きる新撰組が、後世どのように伝えられるのか…
私は楽しみでなりません』

ゆっくりと天を仰いだ
天井の隅には、一匹の蜘蛛が巣を張っている

『まるでこの時代は蜘蛛の巣…
様々な思想が入り乱れ、各々が争い、策を廻らせている…
一度巣にかかれば、抜け出すことができず、やがては散りゆく…』

男はまた静かに目を閉じた

『山南、時間だ』

襖の外から、聞き慣れた声がした

襖は静かに開かれ、すぐに止まる
その隙間からは土方歳三の姿が半身ほど見えていた