桜色の恋 (龍と桜とロボットと。)





にこりと笑みを浮かべたお母さんが、
私から離れてお兄ちゃんに近づく。



「要らな…いや、うん。
貰う。今欲しい」

「用意するわね。
ちょっと待って?」


キッチンに向かったお母さんを目で追いながら
床から起き上がる。


「……」

「あ…お帰りなさい、お兄ちゃん。」


「お前さ、なんなの。」

冷たい目で私を見下ろす、お兄ちゃん。



「毎度毎度さぁ…
はぁ……
うぜぇんだけど。」

っ…

お兄ちゃんのことも、怒らせちゃってる…


「ご、めんなさい……」


聞こえた舌打ちに肩を震わせる。



「お前さ、
必要とされてねぇんだよ、分かる?
誰にも求められてねーの!」

ドカ、と床にスポーツバックを放り投げて
ダイニングテーブルにつくお兄ちゃん。

「目障りなんだよ…
大人しく部屋で一人でいろよ
邪魔なだけなんだから!」


イライラとした口調で
そういったお兄ちゃんが
シッシッと手を振る。


「お待たせお兄ちゃん。
お味噌汁も今温め直したから…」

キッチンから出てきたお母さんが
お兄ちゃんに話し掛けて
話が止まる。



そっと階段に足をかけ、
できるだけ足音を立てないように駆け上がった。



「あの子は?」

「…別に。
ウザかったから言いたいこと言って追い出した。
俺これから飯だし」

「そう。
そうよね…邪魔だったわよね」


パタン、

そっと、できるだけ音を出さないように
ドアを閉めると、
もうほとんど何も聞こえなくなった。



そっとスクールバックを開けて
教科書を取り出す。



「もっと、頑張らなきゃ……」



私は要らない子だから…

捨てられないように頑張らなきゃ……