桜色の恋 (龍と桜とロボットと。)



眉を寄せたお兄ちゃんが口を開こうとした瞬間、

立ち上がったお母さんの前に飛びだして
パッと笑顔をつくる。



「今学校で練習しててね、
今度の五、六時間目が本番なの。
お母さん、来てくれる?」


少し冷たい眼差しが、私に向けられる。




「っどうでもいいのよそんなこと!
話を遮ってるんじゃないっ!」

振り上げられたお母さんの手が見えて、
思わず目をつぶって下を向いた。




バシンッ


頬から響く衝撃。





カッと熱くなった頬は
じんじんとした痛みを帯びた。


「ごめんなさい、お母さん」


またお母さん怒らせちゃった……






そっと目を動かすと
お兄ちゃんはこっちを見ていて、

その目に何も映ってないように見えて
ぞくりとした。



「どこ見てるの!?
ちゃんとお母さんを見なさい!!」

その声にはっと視線を戻せば
怒りに顔を染めたお母さん。

「ご、ごめんなさいお母さん。
ごめんなさ…」


バチンッ

「どうしていつも分からないの!」

「ごめんなさいお母さんっ」


「何が悪いか本当にわかってるの!?
いつもいつもどうしてなの!?
なんでいうことを聞けないの!
もうお母さんを怒らせないで!!」


バタンと勢いよくしまったドアの音が
背中に投げかけられる。




そっとさっきの方を見ると、
もうお兄ちゃんはいなかった。