『俺の元へ来い、日和。
お前には俺しかいないんだ』
私は、もう、
独りで生きていける人になりたかった。
『お前は独りでなんか生きていけない、
邪魔なやつなんだよ』
優しい声色。
『俺は優しいからな。
お前が帰ってくるなら…助けてやるよ。』
あいつらのこと。
バチン、
目の前が弾けたように俯いていた顔を上げた。
目の前に龍桜のみんなの顔が
チカチカと点滅する。
「っぁ……」
『ん?別に助けなくていいか?
なら話がはえぇからそれでもいいぞ?』
とぼけた口調。
怒りが湧き上がる気がしたけど、
相手になんてぶつけられない。
そもそも、この人が言っていることは、
私にとって……
『なぁ、日和?
お前は俺の元へ戻ってくる。必ずだ。』
『お前は服従者だからな』
脳内で再生されるたくさんの映像。
その中での私はいつも同じような顔をしていて、
いつも同じセリフを言われていた。
『……返事は?』
低くなった声に肩が跳ね上がる
私は裏切り者。
もうこれから先、
泣くことは許されない。
でも、それでも、少しでもいいから、
みんなを守りたい……
『おい』
「っ…はい、蓮さん」
道路の向こう側で
耳に携帯を当てた蓮さんを、
私を見つめる黒い目を、
ゆっくりと見つめ返した。