毎回の事のように言うが"冬場の布団"こそ世界で一番、人を駄目にするモノだと僕は思う。

現に今、布団の魔力は僕の右手を操り、今日の朝6:00に僕を起こすはずの目覚まし時計の電源ボタンをOFFにさせ、二度寝へと誘っているからだ。

僕「くそう...布団め...今日は彼女とデートなのに、よくもこんな酷いことを...」

そんな思いとは裏腹に僕は身体をよじらせてマブタを閉ざした。

-1時間後-

僕「...zzZ」
携帯≪...テロン♪≫
僕「z..n...」
携帯≪テロン♪テロン♪テロン♪≫
僕「ん?」
重い瞼をゆっくりと開きながら、音の出ている物が何なのか確認した。携帯だ。
そして、凍りついた。

"彼女からのLINEが30件"

...急いで彼女に電話をかけた。

僕「プルルルル...もしもし?」
彼女「もしもしー!いまどこ?」
僕「アヤ様..大変申し訳にくい事があるのですが...」

アヤ様こと、彼女の"渡辺彩"に僕は震えながら話しかけた。

アヤ「ふぇ!?なんで様付け?まさか...タクマ...まだ家なの?」

タクマこと、僕、"島谷拓真"は壁に掛かっている時計を目にした後に答えた。

タクマ「ごめん!!まだ家なんだ。」
アヤ「えー!!」
タクマ「全部布団のせいなんだ...本当にごめん。今からだと1時間後に着くから待っててもらってもいい?」
アヤ「まじか...でも大丈夫!実はね、ラインの返信が来なかったから、ずっと家にいたの。ほら...私の家、今日の集合場所の新宿に凄く近いからさ。」

この時、彼女が先に待っていると思っていたので内心ホッとした。
しかし、悠長に落ち付いてる暇はない。

タクマ「まじか!でも、急いで準備するよ。後でラインで何時に新宿着くのか連絡するからそれまで自宅に待機してもらってもいいかな?」
アヤ「うん。わかった。待ってるね!」
タクマ「ありがとう!ごめんね」

電話を切った後にすぐに準備に移った。

朝ごはんに卵かけご飯を食べ、
寝癖だらけの髪を整え、歯を磨いた。
よし!服は、おととい買ったワイシャツとカーディガンを着て行こう。

ワイシャツの襟を整えながら壁の時計にもう一度視線を向ける。
今からだと新宿に着くのは...
全速力で自転車をこげば、約束の時間から1時間オーバーした11:00には着くみたいだな?アヤには11:00に着くと連絡しておこう。

"11:00には着く。"
携帯≪ピロン♪≫

よし。送れた。
さあ、全速力で自転車を漕ぐぞ!
間に合えー!
気持ちを鼓舞させ、勢いよく僕は家を飛び出した。




続く