「姉ちゃん、ビショビショじゃん!何してんの?」


弟、季(とき)は、早く入れと促し、


玄関から手招きをした。


苳は門を開けて中に入り、


ハンカチを握ったまま玄関を閉めた。


「何そのハンカチ」

「借りたの」

「誰に?」

「知らない人」


季は明らかに意味がわからないと言うような顔をして


苳からハンカチを受け取った。


「洗濯しとくから貸して。
また今日借りた場所いけばいつか会えんじゃねーの?」


それだけ言うと、


季は洗面所の方へ歩いて行った。