息を切らして足を止めたのは


自分の家の前だった。


その前の道路には


白と黒のブチの猫が1匹横たわっていた。


いつか見た、あの綺麗なブチ猫だ。


「やっぱり…」


苳は周りに車がいないのを確認すると


猫の横にしゃがみ込んだ。


「遅いから迎えに来てくれたんだね…ごめん。ありがとう…大好きだよ」


苳の瞳からは涙が溢れて止まらなかった。


車に轢かれたであろう猫は


見るも無惨な姿にはなっていたものの


顔だけは幸せそうに眠っているようだった。


苳はその猫を抱き上げると、


歩道の方へと連れて行き、


黙ったまま撫でていた。

































猫の首には、


「sui」と書かれた鈴がついていた。