フェンスを抜けると、


そこは展望台からの景色のように


街を見下ろすことができる高台になっていた。


「綺麗…」

「でしょ?昔、フキと初めて会った時も僕がここに連れてきたんだ。」

「え…本当に?」


苳は驚いて翠の顔を見た。


「多分、覚えてないよ、苳は。」

「そっか…」


苳は少し悲しくなって、


静かに遠くを眺めた。


すると、リンと小さく鈴の音が鳴った。


「綺麗、その音。」

「あ、聞こえた?これ、ネックレスなんだ。小さい鈴の」

「本当だ。可愛い」

「…いる?」

「え!悪いよそんなの!」

「…わかった。じゃあ明日はここで待ち合わせ。いいね?」


翠はネックレスから手を離し、


苳の手を取った。


「うん、わかった」


苳がそう答えると、


翠は優しく微笑んで背中を向けて


フェンスをくぐって行った。