ケンムンの森

「わぁぁ!!」
朝、2時22分
また、だ。うなされるようになった。
もうすぐ夏がくる。
そういえば、浩がいなくなってから悪夢をみなくなっていた。
今頃また追いかけられる夢をみるなんて。
何なんだろう。浩が呼んでいるのか?
部屋の窓のカーテンを開けた。暁の空はとても綺麗だ。
ふと、下を見ると、玄関の前に何かがいる…俺は固まった。
それは見覚えがある。あいつだ。あの赤い色。ぐちゃぐちゃの髪。やばい。こっちに気付くな!!
俺は息を潜めた。
ゆっくりとカーテンを閉めようとした時だった。
「ジャッ」
しまった!カーテンの音が!
そうっと下を見ると化け物の姿がなかった。ほっと息をついた瞬間また俺は固まった。
ガラス越しに写し出された化け物。
俺の背後にいるのだ。目が逸らせない。
振り返る勇気もない。化け物は高い声で
「約束。約束。待ってる。待ってる。もうすぐ。」
と言って部屋のあちこちをピョンピョン飛びまわっている。
朝日が昇ってくる。
真っ赤な光とともに…俺は目を疑った。
窓の外にはあの化け物が沢山。屋根の上や道路をうめつくし、ピョンピョン跳ねているのだ。
「約束。約束。約束…」