ケンムンの森

振り返ると、母と浩の両親がいた。
俺の後を追いかけてきたのだろう。
俺は母と浩の両親に昨日、滝で遊んだことを話した。
ただ、化け物の話だけはしなかった。
大人達には、馬鹿げた話に聞こえるだろう。信じてもらえないだろうから。
謎の生き物をみて立ちながら意識を失って気付いたら浩がいない。こんな話をしたら俺は受験ノイローゼもしくは統合失調症か何かと思われて精神科行きだ。
自分の不甲斐なさに涙が溢れた。その日俺は一日中家にいた。
浩は滝で溺れたかもしれない。
その日、滝周辺の捜索が行われた。
浩は見つからなかった。
次の日も
その次の日も浩は見つからなかった。
俺は、ほっとした。浩が溺れていないことが分かっただけで、生きているかもしれないと希望が持てた。
浩がいなくなってから俺は毎日メールを送った。
返事が返ってくるのを願って。