教室に戻れば、孝先輩は窓側の後ろの席でココアを飲みながら外を眺めていた。
「お、遅かったな」
「……すみません」
「いいって、ほら帰ろうぜ」
そう言って鞄を持つ先輩をみて、ギュッと唇を噛み締める。
資料室を出る時に、前田くんに言われた言葉を思いだす。
『野村は、篠原先輩に告白しないの?』
『え?!』
『俺に言わせといて、野村言わないのはずるいだろ?』
意地悪っぽくそう言った前田くん。
……好き、って言いたい。
でも……怖い。
長谷川先輩の時と同じだ。
孝先輩は私を好きだって言ったけど、今もそうなのかな。
不安ばかりが、頭の中をぐるぐるとまわる。

