「じゃあ……っと、俺先に教室行ってるな」
「え? 一緒に」
『一緒に行こうよ』と言おうとしたとき、後ろから腕を掴まれた。
振り返れば、少し機嫌悪そうな孝先輩が立っていて。
「なーにしてんのかな、莉緒ちゃんは」
「え、なにって……」
前田くんと話してただけだし……。
孝先輩はため息をついて、掴んでいた腕を離した。
自分の下駄箱を開け、孝先輩は「うげ」と声を漏らす。
「ったく……どうすっかな、これ」
「? 嬉しくないんですか?」
「そりゃ、嬉しいけど……。俺ほとんど相手知らねえと思うし」
なるほど。
苦笑いをする孝先輩をみて、私は少し微笑む。

