「莉緒」
先輩の瞳を見れば……わかる。
「莉緒は……ずるい」
ずるい、ずるいよ、先輩。
そんな瞳をするなんて。
「俺の気持ち、わからないふりする莉緒はずるい」
……目を、逸らせなくなる。
「……わか、らないですよ……っ」
私がそう声を振り絞って言うと、さっきまでいたところから、鐘の音が響いた。
そして、孝先輩と私の影が、
そっと重なり合った。
「莉緒」
唇が離れ、孝先輩は、いつもより少し低い声で、私の名前を呼び、そっと耳元でささやいた。
「これでも、本気じゃないって思う?」
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