「ま、とりあえず、並ぼうぜ」

そう言って、先輩は私の前を歩く。
だけど、馴れない格好で、私は先輩について行くのが少し難しい。

うっ、人混み……歩きづらい……。

そう思っていると、私の手が優しい温もりに包まれた。

「わりっ、大丈夫か?」

「……はい」

「もっと寄れ」

孝先輩はそう言って、私の肩を引き寄せる。
ぎゅっと、私の手を握り、さっきよりゆっくり歩く。

……なんで、手なんか握るの。

そう思いながら、私は、ギュッと孝先輩の手を握る。

顔を上げれば、先輩の背中があって。

……ドキドキする。

隣を歩くだけなのに、心臓の音がうるさい。