「じゃあ、俺そろそろ帰るな」

「あ、はい……」

「……今度は、引き止めないんだ?」

「は、早く帰ってください!!」

「ははっ、ほんと莉緒はわかりやすいなっ。んじゃ、また明日」

孝先輩は、優しく笑い、ポンポンと頭を優しくなで、部屋を出て行った。

……ずるい。
最後に、あんな……優しい笑顔を見せるなんて。

また……まだいて欲しいと、思ってしまう。

心臓が、うるさい。
顔……熱いな、もう汗かいたのかな。

「熱……またでちゃったのかな」

心臓がうるさい理由も、顔が熱い理由も、私はまだ、気づけずにいた。