「莉緒、莉緒」
「……んっ、孝、先輩……?」
「お母さんから電話、来たぞ」
「あ……えと、ありがとうございます」
「おう、んじゃ俺帰るな」
「え、せ、先輩、も車に」
あ……でも……。
「親に男と2人きりでいました、なんて勘違いされるかもしれないし、俺は先に帰るよ。気をつけて帰れよ」
「……はい。あ、明日、試合10時からで……」
「りょーかい。明日、無理して来んなよ? んじゃ」
そう手を振る先輩の手を、思わず掴む。
「……あのー、莉緒ちゃん?」
「……あ、えと……」
な、なんか思わず掴んじゃったけど……。
なんだろう、この気持ち、この感じ。
体が熱くて、頭がクラクラする。
私は、ゆっくりと顔を上げて、孝先輩をジッと見る。

