「えと……」
少し、目を逸らしたときに、脳裏に孝先輩の笑顔が浮かぶ。
もし……今日前田君と帰るって言ったら、孝先輩はどんな顔をするのかな。
「ごめんね、前田君。その……孝先輩と帰るから」
きっと、前田君と帰ったら、孝先輩は悲しそうな顔をしてしまう。
そう思うと、私は断らないと、と思った。
孝先輩の、そんな顔はみたくないって思ったから。
「そっ、か……うん、そうだよな。いきなりごめんな?」
「ううん。あ、はい、お金」
私は財布から110円取り出して、前田君の手のひらに乗っける。
「あのさ、明後日の土曜とか空いてる?」
「え……うん」
「その日、ここでサッカー部の試合あるから、その……応援、来て欲ししい、というか……」
「……うん、わかった」
「まじ? やった」
そう嬉しそうに笑う前田君と約束をして、教室へと戻る。
教室へ入れば、すぐに朝のHRが始まった。

