先輩と別れ、後ろから「莉緒」と優しく私の名前を呼ぶ篠原先輩の声が耳に届く。
「……バカだって、笑いますか……っ」
「……ふっ、バカだよ、お前は。でも」
グッと引き寄せられ、篠原先輩に強く抱きしめられる。
「せんぱっ」
「でも、そんなバカみたいに一生懸命な莉緒が、俺は好きだよ」
先輩の言葉に、目を丸くする。
「莉緒、よく頑張ったな。よく伝えたな。伝えたくてたまらなかったけど、でもほんとは怖かったんだろ?」
そんな先輩の言葉に、私の瞳からもう一度涙が溢れ出す。
「よく頑張ったよ、お前は」
そう優しく声をかえてくれる篠原先輩の腕の中で、私は小さな子供のように泣いた。
先輩の腕の中はとても、温かくて。
とても……優しくて。
「お。莉緒、雪だ」
先輩の言葉に、外を見ると、真っ白な雪が空から降っている。
「……先輩、今日はありがとうございます」
私はそう、小さく呟く。
「ん?」
「いえ、なんでも」

