下駄箱まで降りると、長谷川先輩が壁に寄りかかって立っていた。
「あれ、野村? どうしたん?」
「先輩……っ、あのっ」
「篠原と帰んないの? 最近さ、よく噂きくよ、つき合ってるって。おめでと」
先輩のそんな言葉に、胸がズキンと痛む。
「篠原いいやつっぽいし、おしあ」
「違います」
先輩の言葉を区切るように、強く言う。
「篠原先輩とはつき合ってないです、だって……私が好きなのは……っ、
長谷川先輩だから……っ」
私がそう言うと、長谷川先輩は、目をまん丸にして驚いている。
「ずっと、ずっと好きでした……っ。だから、先輩がっ、先輩だけはっ、私が違う人を好きだなんて思わないでくださ……っ」
そっと、頭に温もりを感じた。

