「莉緒、行っておいで、きっとまだいるから」
篠原先輩がそう言って、私の背中を押す。
私は、その勢いで、走り出した。
階段を勢い良く駆け下りる。
先輩……先輩……先輩はきっと、忘れてると思います。
でも、私はこの先ずっと、忘れることはないです。
あの日……私が、先輩に恋をした日のこと。
入学したばかりのとき、まだ職員室がわからなくて、廊下をキョロキョロしながら歩いてたとき。
先輩は声かけてくれましたね。
『新入生の子、だよね? 迷子?』
って。
最初は、子供扱いされて、少しムッとしたけど、私を案内してくれる前を歩く先輩の背中に、ドキドキしたの。
あの日から、先輩の背中が私の憧れで、大好きで……。
ずっと、先輩の後ろ姿を見てた。
隣に……結城先輩がいても。

