自動販売機には、いつも通りたくさんの人が並んでいて、私も手を擦りながら自分の順番を待つ。
「まだかな〜」
5分くらいで自分の順番がきて、110円を入れ、ホットココアのボタンを押そうとした時だった。
「隙あり」
……は?
ガランゴロンという音に、私は恐る恐る下に目線を移す。
下からでてきたのは、ホットココアではなく、ブラックコーヒー。
そのブラックコーヒーは、左側から伸びてきた手に回収された。
「ごちそうさん」
そうニッと笑った知らない男子生徒は、ブラックコーヒーを空け、グッとコーヒーを口にした。
「飲む?」なんて、シレッときく目の前の男子生徒を、わたはキッと睨みつける。
「なにしてくれてるんですか!! わたし、ブラックコーヒー飲めないんですよ!!」
私がそう言うと、目の前の男子生徒は目をまん丸にして、ケラケラ笑い始めた。
「ははっ、コーヒー飲めないって、怒るとこそこかよっ。やっぱ、俺の目に狂いはなかったな」
「はあ?!」
「俺、2年B組の篠原孝(シノハラ コウ)。お嬢さんは?」
目の前の人をジッと見ると、ブレザーの中には青色のパーカーを着ていて。
なんでこんな目だつ色……。
っていうか、耳、ピアス空いてるし……もしかして不良?
「……失礼します!!」
こういう人とは、あまり関わらないでおこう、と思いそう強く言い放った。
「失礼しますちゃん? めずらしい名前だね?」
クスクスと笑う、篠原孝と名乗る人。
私はキッと睨みつけて、教室へと早歩きで戻った。