「あーえっと、ブラックコーヒー、間違って買っちゃって……」
そうへらっと笑って言うと、前田君は不思議そうな顔を見せる。
「なんだよそれっ」
「えへへ……。あ、前田君、よかったらいる? わたし飲めなくて」
「あー……じゃあ、もらうわ」
「ほんと? ありがとっ」
「……野村ってさ、その……」
「ん?」
「……いや、なんでも。教室、行こうぜ」
その後、前田君と他愛のない話をしながら、一緒に教室に向かった。
「前田君、サッカー部だっけ」
「そう、一応スタメンでフォワード」
「スタメン?! すごい!」
前田くんは、1年生の時も同じクラスで、一度だけ席が隣だったときがあり、その時から男の子の中ではよく話す人になっていた。

