夏休みが終わり、衣替えをし、少しずつ寒くなってきた高校一年の11月。

「沙代、わたしココア買ってくるね」

「ほーい」

友人の高村沙代と、いつも通りのお昼休み。
教室を出ると、廊下はとても寒く感じる。

わたしは、手を擦りながら110円をもって自動販売機へと向かった。

自動販売機は一階のカフェテリアの横にあり、お昼休みの自動販売機の前はかなり混む。
一学年のクラス数は5クラスあり、三階を使っている。
私のクラスは1年C組で中央階段のすぐ横。そこを降りて行き、3年C組を通り東階段を降りて行けば自動販売機の目の前。これがいつもの私が通るルート。
たぶん、同じクラスの他の人なら、三階から東階段を降りて行く人が多いだろうし、きっとその方が早いんだと思う。

3年C組を通る際、私は歩くスピードを遅くする。
廊下側の窓ガラスから見えた、私の想い人、長谷川雄二先輩。

先輩を見るために、いつもこのルートを通っているのだ。