私の事バカにして。

その時だった。

『…大切な人と、よりを戻せて、良かったね』

「…えっ?」

ぱっと振り返ると、誰もいない。

「…春華?」

寧人が不思議そうに聞いた。

低い男の人の声だったから、寧人だと思ったけど… 今考えれば、寧人があんな台詞を言うなんておかしい。

『…君は、まだ明るい人生が待ってる。
僕は色々な生徒を見てきたけど、君ほど僕に優しく接してくれる人はいなかった』

だ、誰なの?

それに、“色々な生徒を見てきた”って、一体どういう意味なの?

『だから、これは僕からのちょっとしたお礼だよ。
僕はこれから壊されちゃうし、体自体は無くなっちゃうけど…
心は…心は、そのまま残るから。
ずっと、君を見守っている。
今まで、大切にしてくれてありがとう。

…じゃあ…… さようなら。
君の事、忘れないから………』

「……っ!」

“壊されちゃう”って…まさか……

おかしいと思った。

誰かに誘導されたかのように、旧校舎裏にやって来たようなものだった。

寧人も同じように。

そのお陰で、私たちはまた、よりを取り戻せて、現在に至る。