「はい、ありがとうございます。……本当ですか?それは、光栄な事です。

分かりました、ロスへ向かいます。

ははっ、副社長のあなたがおっしゃるなら、すぐにでも。お土産話をお聞かせしますよ。

現実に試験を見て、聞いた私が出席した方が“あの方”に説明もしやすいじゃないですか。

それで、私が……出席しても良いとなれば、あの方に気に入られたという事で、宜しいんですよね?」


 男は伏せた写真を裏返しては、写りこむ少年を何度も見直した。


「真奇人(まきと)さんにはお世話になりっぱなしです。ええ、ええ……。大丈夫、私に任せてください。すぐには無理ですが、はい」


 熱いブラックコーヒーにも関わらず、一口で半分まで飲み干した。これからの仕事量を考えると、今日はまた徹夜になる。そう確信しての行動だった。


「配給の方頼みます。

……“社長”が目障りなのは今だけですよ、お気になさらずに。

ロスの方は星がキレイですよね。昔、行きましたよ。まだ真奇人さんと会う前の、話です。8年前ですかね、もう」



 『飽きてきたな』


 男は、ふとそう思った。今日もやる事があるし、ここまでにしておくか。


「大丈夫です、星の更に上まで到達されている方に、そうおっしゃって頂けるなんて、この霧島慶二、男冥利に尽きますよ。

ちょっと使い方違いますか?ハハハ、ええ、ぜひ。それじゃあ、現地で。失礼します」 


 霧島慶二は電話を置いた。携帯と違い、デスクの電話は話しづらい。日本製の物が、ここまで使いづらいものになるとは。