「お願いしますっ!一度だけデートして下さい!1時間、いや10分でいいです!」


「スキです、ダイスキです!そこらへんのアイドルより10000倍かわいいですっ!一生、大切にします!」


「あ、葵さん。僕ね、家がお金持ちなんだけど、今度お父さんに頼んで、高級レストランでお食事なんて……いてっ、足踏むな!」


 男子生徒達のなりふり構わない求愛コールが、廊下に響く。


 葵の困った表情を、遠くで見つめる二つの影。


「あーあ、やっぱり葵ちゃんなら、こうなるよね」


「アイツら、葵のオヤジがあんなんだって知らないだろうな…オレは今すぐオヤジが乗り込んで来そうなのが、怖い」


 興味無さそうに話す少年は、くわえていた牛乳のストローをパッと離し、眼を輝かせた。


「雷也、遂に作戦を思いついた」


「えっ……なんか、嫌な予感するんだけど…大丈夫なの?」


「あっ! 龍一っ!」