モバイバル・コード

 オレ達の『執行』まで、残り2カウントに迫った。


 プレッシャーから、愛梨が3回連続で、道を間違えた。彼女が立った通路が、3連続で『1秒』の既読を表示していたのにも関わらず、2秒だとオレに申告をしていた。余計な時間を、10分も食った。


 執拗に攻めることはしないが、オレがあからさまな嫌悪感を体全体で、表していたに違いない。心の中は、白い部屋とは間逆に、暗黒に荒みきっていた。


 愛梨の表情は無表情になり、目は遠くを見つめている。生気の無い顔が、二つ並んでいる事だろう。


 二人共、無意識に近い状態で、通路に立っては『あ』と押し続ける。 


 遂に、オレが『既読』の時間を間違えた。『3秒』を『1秒』だと申告し、検証の為に時間を割いてしまった。


 愛梨も、自分の体内に潜めていた、苛立ちを隠し切れなくなる。


「龍ちゃんも間違えてる……ここ、3秒だよ。1秒と3秒、間違えないでよっ!」


 どうしてだろう。心にも思ってない事を……。


「愛梨の方が間違えた回数が多いだろっ!? うだうだ言ってないで、進むぞ!」


「うだうだってなに!? あたしだって言いたくなんて無いよっ!!だけど……だけど、残りが3時間切ってるんだよ!? 分かってんるんだよね!?」


「分かってるよ!! 絶対絶命のこの状況くらい、分かってるよ!! クソ!!」


──『ドンッ』


 壁を蹴り飛ばす。


 母さんに昔教えられた事が、ふと頭によぎった。