「龍ちゃん、こっちじゃない!そっちだね」


 愛梨とオレは、道が二手に分かれていればすぐに壁の間に立って雷也へメッセージを送る。内容は『あ』で十分。


 3方向に分かれているのなら、一人が2つの場所で素早く打って、確認する。この戦法でなんとか『マモル』チームに追いつくしかないだろう。


 繰り返し、繰り返し、同じ作業を繰り返す。通路を見つけては、壁と壁の間に立ち、携帯に文字を打ち込んでいく。


 この姿は、傍から見れば、とても滑稽に映るだろう。


 しかし、不格好でも構わない。積み上げていくしか、オレ達に方法は残されていない。


 残り時刻は『6時間50分』に差しかかろうとしている。


 たまに見かけるスピーカーが、作戦の成功を報せた。『ピンポーン』と音が鳴り響く。


──『おめでとうございます。Aチーム【RARA】がチェックポイント2を通過しました』


 オレ達は誰も、喜ばない。そんなヒマが無い事に、とっくに気づいているから。