モバイバル・コード

──『パチパチパチ』


 慶兄のゆっくりとした拍手が応接室に響いた。


「いやぁ上出来だ、龍一。愛ちゃんも昔に比べてキレイになったと思う。後5年、彼氏が出来なかったらオレと付き合おうな。さぁて、帰りは送っていこうかぁ」


 愛梨の瞳がキラキラしているのをオレは口を尖らせて潰してやった。


 慶兄がそういう思わせぶりな事を何度も言うから、愛梨が本気にするんだよ。


 時計を見ると12時半を過ぎて1時近くになっていた。


「慶兄、話はこれで終わり?」


 ああ、とさっぱりした返事。相変わらず雲のような人だ。


 慶兄は俺達を車までエスコートした。


 左ハンドルの高級車は、中古の安物だと言っているが、この革張りのシートが安物ではないことを示していると思う。