モバイバル・コード

──『モバイバルまで残り10秒』

 
 一切の感情が消えた上で、携帯電話を見つめる。眩しいライトを遮るように、携帯の陰で自分の顔を隠す。


──9

 何が本当か分からないまま、ここまで来たと思う。

──8

 勝った所で、何をするのかもまだ決めてない。そもそも、勝てる見込みだって薄そうだ。

──7

 愛梨も雷也も、気づいているだろう。12時間という長い時間が何を意味するのか。

──6

 大体、あの動画で観たのは『廊下』を走っていた画だった。ただの廊下じゃないのは確かだろう

──5

 全てが、全部嘘である事を願いたい。せめて、ペットボトルの水くらい飲ませて貰いたかったが、逆にトイレに行きたくなるだけだろう。

──4

 そうだ、もっともっとストイックな気持ちにならないと……。


「ねぇ、龍ちゃん」

──3

「なんだ」


 クソッ、意識が中断された。

──2

「ううん、なんでもない」


 何でもないのに女はたまに呼んでくる。いったいなんなんだ。

──1

「愛梨、集中しろ、集中」


 えっと、もっと自分を追い込まないと、こう、やる気を出さないと。

──0

「何に集中すればいいの!何もまだないじゃん」


 絶対に、勝つ。オレ達が勝つ。なんとしても、勝つ。

──『モバイバル開始』


「あーーっ!もう! こうカッコ良く自分を奮い立たせようと思ってたのによ!!男はな、こういう時色々と」

 
──『ブブブーンブブブーン』


「あっ!誰かからメッセージ来た!」


「どいつもコイツも空気も読めないんだな……って始まってるのか……」