モバイバル・コード

──午後10時40分


 右手の腕時計を見た。ちょっと早いご到着。


 9月下旬の秋葉原駅前。


 ビル街の風がネオンの光を纏って全身を突き抜ける。夜更かしとはまさにこの開放感。


 そうだ、この前も加藤さんの引っ越しのバイトでここに来たんだっけ。


『……月1日、新サイト『モバイバル』が…開設されます』


 オレ達の前を通り過ぎた──『街宣車』


 音は小さめだが、こんな時間に通らせていいのか…?


 オレはポケットにある携帯を握りしめる。


「まだ10時過ぎなのに……人少ないね。少し寒いよ」


 愛梨は両手で自分の腕を抱きかかえて上下に擦っていた。


「アキバは10時過ぎると店が閉まるからね。あのビルだよ。いや『イルミナスタワー』って名前だね」

 
 自分の好きな街に来て雷也が活き活きしているように見えた。


「ほら、いいんだ。お前ら付き合ってるんだから、腕組んでも。オレの前だからって遠慮しなくていいぞ」


 オレなりに気を利かせてみたが、どこか二人の反応は困っているように見えた。