モバイバル・コード

 一人っ子のオレには雷也みたいに本当の兄貴がいる人間の気持ちは分からない。


 だけど、血の繋がってない『兄貴』のことをオレは誇りに思ってる。


 オレも少しずつでもそういう人間に近づきたい。


 アルバイトばかりで、目先の事しか考えていないオレに『男の生き方』を見せてくれたのは慶兄だ。


 気づかせてくれたのは加藤のおじさん。


 何事も頑張っていれば認めてもらえる。


 オレも、その言葉通り生きたい。



「なぁ、雷也……お前の気持ちはオレには分からないよ。一人っ子だから。

だけど、お前はお前だよ。兄貴がどれだけ凄い人でも『一緒にエロ本を買いに行こう』って言いたくないな」


 自分でもよく分からない話だが、なんとなくニュアンスさえ伝わればそれでいいんだ。


「二人でよく行っただろ? お前だから言えるんだ。お前を必要としてくれる人がこうしているんだからいいんじゃないのか? そうだよなぁ、愛梨」


 我ながら良い事を言ったぞ。


 月並みだけどしっかりと相手を尊重する気持ち、それでいてちょっとユニークさも……。


「ごめん、今なにか言った?」


 よく見ると雷也の手に持つ携帯電話に『ヒモ』がついていた。


 途中から二手に分かれた『ヒモ』は隣に座る愛梨の右耳に。


 もう一つは雷也の左耳に。



 あっ……『音楽』も聴けるんだよな、コレ。



「オレの携帯にも音楽を入れてくれって言ったんだよ」