モバイバル・コード

 小さな頭がコクりと頷いた。料理も出来るなんて完璧だ。葵はまた右手で携帯を触った。


【お手伝いさんに教わったりしてるから、出来るよ。龍一は何が食べたい?簡単なものならわたし作ってあげたいな。スーパーもホテルの前にあったよね?小さかったけど…】


 どうしようか。昼も兼ねてのご飯……。


「卵焼きと味噌汁。後は……葵に任せてもいいか?」


「うん……もう少しだけ…この……ままでいい?」


 もう少しどころか、10時間くらいこのままでイイ。そう伝えたいが、伝えてしまえば……全てを認めてしまう事になりそうで怖い。


 なんか、卑怯だ。オレ。葵の気持ちだけに甘えて、答えも出さずに。愛梨の事だって、気になってるし……ナンパ野郎、ユウマの事を言えない気がする。


 このまま10分くらい、何もせずに時間が過ぎた。葵の心臓の高鳴りが右腕を通じて聞こえてくる。凄くドキドキしている。


 オレも今すぐ抱きしめたい衝動に何度も駆られたが、1歳年上の余裕によって理性を押さえつける。でも爆発しそうな気持ちもある。


 自分の中ので、理性と野生との戦いを眺めていると、葵がふっと身体から離れた。