モバイバル・コード

 心なしか、慶兄の瞳に強い憎悪を感じた。なんだろう、この感じ……。


「国としては、このような権力行使の力技など使いたくはありません。ですが、より『健全な社会の育成』の為に従わないなら仕方ありません。

テレビやストリーム放送をご覧の視聴者の皆様に、私は問いたいのです。

『若者の想像力や生産性を欠如させる社会』をあなたは望んでいますか?


──なんら生産性も持たず


──企業の営利目的に夢を奪われ


──夢中で携帯電話を操作する人間はあなたの周りに居ませんか?


電車に乗ってこの放送を携帯電話で見ているあなた。


周りをすぐに見渡してください。あなたを含めて、何人の乗客が携帯電話を見ていますか?」


 慶兄の演説は熱を帯び、そして全ての人の意識を吸い込んでいるかのようだ。


「現代社会に生きる多くの人にとって、携帯電話やパソコンは欠かせません。私も同じです。


良く言えば『機械を利用』している。

悪く言えば『機械に利用』されている。


どちらにせよ、情報端末はもう現代人と切っても切れないものへと『進化』してしまいました。

もちろん、国民の皆様が今まで通り携帯電話やパソコンを利用し、遊んで頂く事は構いません。

むしろ、そういったことに生きがいを見出している人間が多くいることも事実です。

ただ、己の利益の為だけに、若者を無駄にたぶらかし、『脳細胞を破壊させる行為』は断じて許しません。

結果として、大多数の企業様が『統一規格』を利用する事にご賛同頂き、今日に至る訳でございます」