モバイバル・コード

──深夜1時53分


 雷也の読みどおりなら、後7分以内にもう一度愛梨とすれ違うはずだ。


 ただ、一つオレの中で疑問があった。おそらく雷也も考えている。


 『あの走っている車両は偽の車両で、誰も乗っていないんじゃないのか…?』

 
 本当は……。


 例えば、オレが『3両目』で 愛梨が『14両目』


 こうなれば、叫んでも聞こえないかもしれない。


 そもそも、ルールに書いてある『他の車両には移動禁止』というのがどうにも引っかかる。


 一つだけ、この疑惑を解消する方法を思い浮かんだ。



【雷也、あいり。今すぐ 車両のそとの駅名 読書んで すぐ、に。雷也 あと書いて】



 気を利かせた返事が届いた。相棒は何でも分かってくれる。



【愛梨、龍ちゃんが言いたいのは『実は同じ車両に乗ってて、さっきすれ違った電車は偽じゃないか』って事だよ。

駅のホームも沿線沿いのビルも照明が落ちて、見づらいかもしれないけど、一瞬だけ確認して。

ホントに見えなかったら『瞬(まばた)き』を何回もして。そうすれば動体視力が向上して、見やすくなるから。】



 さすが秀才。ヒント付きでメッセージを送るなんて冴えてる。

 
 オレは、この時点でどこに居るのか分かった。ビルの明かりと通り過ぎる駅の形は何度も見たことがある。


 今、オレは『神田』を通り過ぎた。間違いない。もう1週してきて上野に着くはずだ。