モバイバル・コード

 少しだけ間を空けて、左手につけてある茶色い革時計を確認する。


「もう連れて来てるの。上野の中央改札を抜ける所に係りの者が待っているわ。試合開始は今から45分後の深夜1時開始よ。

すでに都内全ての改札のシャッターは降りていて、本戦参加者意外は誰も立ち入れないようにしてあるから」



 やっぱり……あの電車のアナウンスの違和感は事実だった。

 
 もう間違いない、『宵闇の席』とは電車の座席の事だろう。



 2回戦は『電車の座席』に関する何かが来る。


 雷也も気づいたようだ、両目が斜め上を向いている。思慮する時の癖だ。


「……そうね、別に推測くらいですぐに解けるものでもないから。ルール説明は私からするようにと、指示を受けているの。これはルールだから、開始前にあなた達に私からメッセージを送るわ」


「分かった、じゃあオレ達も頃合いを見計らって早めに行くよ。これ以上、ナツキさんと居たくないんだ」


 ナツキは少しだけ優しい顔をした。


「……時間に遅れないように。課長が言う通り、私もあなた達に期待しているわよ。頑張ってね」


「……龍ちゃん、愛梨も行こう。ありがとうございました」


「あ、ちょっと待って……」


 愛梨はナツキの両手に上から包み込むように掴み、元気良く話した。


「あたし達、絶対勝つから!! そしたら非番の時にナツキさんと遊びたいです。ナツキさんもお仕事頑張ってねっ!」


 ナツキが何を言ったのか、声の小ささと方言で聞こえない。


 でも、満面の笑顔で話していたんだ。