モバイバル・コード

 雷也のサラサラの髪の毛が、風になびいていた。


「大丈夫だよ。次は僕と愛梨も居るはずだから。3人で……突破しよう」


 言葉は、要らない。


 雷也の方に顔を向け、少しだけ微笑み返す。


「戻るか」


「うん」


 店内に戻るとナツキはすっかり泣き止んでいるようだ。

 
 テーブルに肘を乗せてあごを支えて、また気丈そうに振る舞っている。


 だが、ガラスに映りこむ表情が少し楽しそうだ。


「あっ!龍ちゃん、戻ってきたの?もう試合始まる時間だもんね」


「そうだ、女同士の会話は終わったか?ここからは管理事務局として立ち会う事になるんだよな?ナツキさん……」


「……ええ……。先ほどはお見苦しい所を見せてごめんなさいね。ひいきしてあげたいところだけど、本戦はひいきなんて出来ないの。

負けたら『執行』となるのはあなた達だけではないから……。実力で突破しなさい」


 ナツキはオレ達の方に体を向けて力強く話した。


「……わかってます。成り行き上、こうなってしまったからにはやるしかない。これ以上、あなたと話すとオレも非情になれない。

許してるわけじゃない事くらい、聡明なあなたなら分かっていると思うけど。すぐに案内してくれますか」


 ナツキは充血を残した瞳をそっと閉じた。