モバイバル・コード

「なんで、なんでさっ!! なんで、みんなウチをバカにするのっ!! 田舎で一番の高校出て、大学出て、やっとこさ東京出て来て、嫌な上司に頭下げて、お尻触られて、頑張っとるのに!!」

 
 ナツキは壁にもたれかかり、大声でうゎんうゎんと泣き始めた。


 一味違ったイントネーションで、ナツキの出身地が西方だと分かる。


「あんたみたいな高校生にまであかんあかん言われて、ウチどないすればええん!! 故郷に錦飾ろう思ってきたんよ。

東京さ来て、垢(あか)抜けても素でしゃべれへんから、かたい標準語で話すしかないやん……それで友達もでけへんまま就職したのにっ!!」
 


 驚きの展開に、オレと雷也はぼーっと突っ立ていた。
 
 
 愛梨が同じ女だから出来る、奇跡のフォローに討って出た。



「えっ……ナツキさん、セクハラされてまでお仕事頑張ってるの……? そうなんだ、故郷どこなの? ああ、そうなの……?」


 ナツキの泣き顔が少しだけ安堵の表情に変わった。


「あたしも電車で痴漢された事あるから分かるよ、凄く嫌だよね……。蹴っ飛ばしてあげたけど……。うん、うん……」


 愛梨は背中を擦りながらナツキを慰めている。


 拍子抜けとは、まさにこのことだ。


「あーナツキさん、ナツキさん。そのままね、泣いてて良いから、まだ試合まで時間あるんでしょ?」


「ほんまにひどいで、あのセクハラ親父は女と見たらすぐにお尻触ってきよるんよ、ウチ今年入ったばかりで相談しようにも周りは男が多いしさっき言った通り……」