「あたしもお洋服とかいっぱい買いに行きたいのに……葵ちゃんみたいな格好したら似合うかなっ!?」


 愛梨も最初の頃の緊張はどこへ行ったんだろう。オレ達は、少しだけ前を向いて成長している気がする。


 はたして誤魔化しているだけなのかもしれない。だけど、少しでも嫌な事は忘れたい。どうせ本番になれば恐怖と戦う事になるんだ。


「愛梨、似合うか似合わないか見せてくれよ。勝って勝って、勝ち残れば買い物にもいけるぞ。4人で買い物行こう」


 愛梨の均整の整った顔に少しシワが寄る。


「うんっ!! あたし達は絶対に負けないんだからっ!」


『次は、御徒町(おかちまち)、御徒町』


「電車で盛り上がってる場合じゃなかったな、まだ試合開始まで時間あるしあの定食屋で腹ごしらえするか」


 御徒町の改札を出て『上野方面』へ歩き出す。


 全国でも有名な『アメヤ横丁』は御徒町と上野を結ぶ山手線沿いにある。


 22時を過ぎ、帰宅するサラリーマンや、まだ飲み足りない様子のサラリーマンが賑わいを見せている。


 露天が多い御徒町も面白い街だ。


 雷也と秋葉原まで来る事はないが、たまに上野まで出てきた時は必ず行く定食屋さんが、この御徒町にあった。


 ガード下を通り過ぎた……この裏、ここら辺だと思うが……


「ねぇ、龍ちゃん。ここら辺だよね?」


「ああ、あの軍服とか色々売ってる黒人さんの店を真っ直ぐ来たところだって覚えてる。ここのはずだけどな……」


 多分、無い。潰れてしまったのか。