「走る種目では無かっただろ。オレが走っただけで。その時は愛梨だけ置いていくから大丈夫」


 愛梨は正月の餅のようにほっぺたを膨らませた。


「なにそれっ!もう!!」



──『次は秋葉原、秋葉原』



 秋葉原に着いた途端に人が増える。総武線とも繋がっているから秋葉原は混むんだよな。



『……お客様にお知らせします。

本日は山手線内の各駅、一斉工事を行う為、終電のお時間が若干変更となります。

その際に私鉄各線にて振り替え乗車を行います。大変ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、何卒ご了承下さいませ。』


 
 珍しい。いや、初めて聞いた。山手線で一斉工事とかあるのか?



「雷也、初めて聞くよな。そもそも事前のアナウンスとかしておくもんだよな?大々的にさ」


 そうだ、この前オレ達が乗った常磐線の北千住駅の次の駅『日暮里(にっぽり)駅』の改装作業。


 あれだって、何週間も前から告知してたぞ。


「確かに初めて聞いた気がする。これじゃあ知らない人も多く居るんじゃない?」


「うう……電車なんかより足が痛いよ……今日のご飯、龍ちゃんのおごりだからねっ!!」


「なんでも好きなもん食べて良いぞ、下手したら3日だけのリッチマンだからな、オレ達」


「話してて虚しくなってくるね。平常時なら絶対に喜んでるのに。そこまで喜べない事が僕達3人の中で共通してるよね」


 雷也の口元が少し釣り上がった。この状況を少し楽しめるようになった分、雷也も成長してるという事か。