モバイバル・コード

 今はテレビに集中したいんだよな……。


「ああ、今楽しんでるんだから邪魔しないでくれよ。

うちはビデオもパソコンも無いんだから逃したら見れなくなるんだから。……そういえば愛梨も慶兄が大好きだったもんな。小学6年の時に告白してフラれてたよな」


 まずい、電話越しでも変なオーラを感じた。


『うるさい! もう龍ちゃんなんか嫌いっ!』



──『ツーツーツー』


 なんだよ……視線をテレビへ戻すと慶兄が満面の笑みで話し続けていた。


「……まぁそういう訳でね、完全無料で楽しい携帯ゲームが遊べるわけですよ。おーい!! テレビの前の若者よー」


 愛梨との電話で聞いていなかったが、今まさに紹介した所か。


「たつやくんや しょうたくんや けんじくんや たけしくんや まさしくんや たかしくんや らいやくんや

りゅういちくんやりゅういちくんや

たかこちゃんや まりえちゃんや あいりちゃん」


 今……2回言わなかったか?


「全国の男の子も女の子も…! ぜひアクセスして遊んでくれよな!!」


 席を立ってビシっと人差し指をカメラに向けて突き刺す慶兄。


 お茶の間には『お笑い』を、関係者に『冷や汗』を届けたはずだ。

 
 そしてオレには『羞恥心』を届けた。