モバイバル・コード

──午後15時30分


 伝説の勇者と別れたオレ達は、遅めの昼食を神田駅前のファミリーレストランでとった。


 それから昨日と同じ、ホテルのスウィートに戻ってきて、くつろいでいた。


 秘密の話をするなら『ホテルのスウィート』が良い。


 オレが慶兄に聞いた言葉だ。当時は中学生だったから意味が分からなかったが確かにその通りかもしれない。

 
 人に話を聞かれる心配もないし、防犯設備も充実している。


 雷也は昨日と同じように、ソファーの前のテーブルに肘を置いてカーペットの上に座っていた。


 愛梨は雷也の向かい側で、女の子座りで携帯をいじっている。


 それって骨盤をゆがめるから良くないんじゃないのかって、前に言ったんだけどな。
 

 オレはキッチンカウンターのイスに腰掛けて、ぼーっとしていた。


 これじゃあ、いつもの雷也の部屋に居るのと変わらないな。


 でも、今はコレでいい。生死を賭けた戦いの前で、ギスギスする必要も無い。


 いつも通り過ごしたい。最後になるなんて、思ってはいない。


「なぁ、二人とも携帯のゲームしてるのか?『勇者』はどうなった?ギルドだかなんだかを率いて戦ってるのか」

 
 雷也が珍しく大声で笑った。


「ぜんぜん、全然ダメだよ。本人も弱いしみんなついて来ないから早速叩かれてる。分不相応な物を持ってるとネットでは叩かれるんだよ。龍ちゃんには関係ないか」


「あーホントだね、みんな『愛のこもったファンレター』を送ってるね、おじさんに。ちょっと可愛そうになってきちゃったかも。ねぇ雷也、知ってて渡したんでしょ?」


 雷也は愛梨の問いかけに、無言のままニコりと笑っただけだ。