モバイバル・コード

「いえ、ちょっと携帯電話のサイトでね、勝ったら億万長者で、負けたら罰ゲームだなんて盛り上がってるんですよ。あははは」


 雷也が取り繕(つくろ)ってくれた。


「……そうなんだ? いえ……同じような話を昨日も聞いてたから……なんだか死ぬとか携帯がどうとか……」


 ちょっと待てよ、今、なんて言った。


「お、おじさん!! それいつ、どんな奴ら!?」


 オレは運転席に身を乗り出して尋ねた。


「……いえ、なんでもないです。ダメダメ。ちょっと気になって聞いただけだし……守秘義務は無いけどお客さんの会話をタダで話すなんて……」


 この狸(たぬき)おやじ。オレ達を値踏みにかけている。


 愛梨がオレに鋭い目線で訴えかける。


 「むかつく!」と言ってるんだろう。

 
 オレが代わりに聞いてみる。


「分かったよ、いくら?」


「……50万。それくらいの価値はあると思うなぁ。お客さん……。3人組であんな会話するのはあの人達が初めてだったからね」


 薄くなった前髪がルームミラーに映っていた。わざわざ気になるように話す所がいやらしい。


 ミラー越しにチラチラとオレと視線が合う。雷也が代わりに切り出した。


「高い、いくらなんでもぼったくりでしょう。おじさん、僕達高校生なんだよ?」


 中年の運転手がイヤな笑顔を作った。