モバイバル・コード

「予測できない事態に備えて、雷也は昨日買い物に行っていた。超高性能の望遠レンズ付きのデジカメ。200m先からでも撮影できるんだって。オレは詳しく知らないけど。

今竜二さんの携帯に送られている動画が証拠だよね。言っておくけど、愛梨を今から止めようとしても絶対に無理だよ。もう『控え』はとったから。別の『携帯』でね」


 竜二は不足の事態に、怒っている様子。

 
 一泡吹かせる事が出来て、オレ達の顔の痛みも消し飛ぶ。


「だから、どうしてあのお嬢ちゃんがここに、霞ヶ関付近に来れたのか聞いている。確かに予想はしやすいかもしれないが、ドンピシャで来れるはずがない。お前ら、どんなトリックを使った……?」


 オレの代わりに雷也が得意げに説明をし始める。


「簡単だよ。日本では認められてない『バイクタクシー』だけど、携帯サイトで募集をかけたらいくらでも担ぎ手が来る。

それに、その小型バッテリーにはGPSの発信機もついていて、僕と龍ちゃんと愛梨には竜二さんの車の位置が分かっている。置き手紙にはこう書いたんだよ」


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リビングにあるカメラを持って、10時半に神田駅北口改札に立ってて。

そこに迎えのバイク便が来る。

位置情報アプリで、僕らが秋葉原を抜けて首都高に入ったら方角を予想して先回りをして欲しい。おそらく霞ヶ関だと思うけど、違う場合もある。

常に半径200m以内には入ってこないで。

GPSで奴らの位置は携帯から見えるはずだから。

そのカメラの性能は凄い。200m先からでも僕らの様子が撮影できる。

最悪、位置情報アプリを使って僕らの車の後から来ても構わない。

絶対に僕達にはメッセージは送らないでね。全部読まれているから。
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「竜二さん、でもさすがだよ。バッテリーに仕込んだ盗聴器を見破られるとは、正直思わなかった。だからオレ達も有益な情報は何も聞けずに終わり、お互いに痛みわけってことで手打ちにしよう」


「何が手打ちだ、堅気の人間がそんな事言うんじゃねぇ……」


 竜二はそうつぶやくと、胸ポケットからタバコを取り出して火をつけた。