モバイバル・コード

「おいお前、この群集片付けろ。なんでもないって言いまわってこい」


「はい! 分かりました!」


 警官が、歯切れよく応じた。


「おい、坊や……龍一。どうする? 今『発動』させてあの世逝きでも良いんだぞ」


「この子がした事はモバイバルの規約に違反します。『執行』した方が宜しいのではありませんか?」

 
 美人な癖して言う事はキツい女だ……。


「竜二さんが居るならもう隠し切れない、本当にすいませんでした。ちょっと『注射』が打たれたのかどうか、反応を見て試してみたかっただけなんです」


 竜二はタバコを取り出して吸おうとしたが、そのまま箱の中に閉まった。


「ちっ、千代田区かここ…。禁煙条例だな。おい、ナツキ行くぞ。龍一、お前……次に変な事したら許さないからな」


「すいませんでした。ちゃんと『本戦』を戦って生き残ります。ナツキ…さんでしたっけ、はいこれ。

使用済みの小型バッテリーです。リサイクルで使うんですよね?」


「……ええ。あなた、二度とふざけた真似しないでちょうだい」


 竜二が先に歩いていくのを見計らって、オレは『使用済みの小型バッテリー』をナツキに返却した。


 少し遠めを確認すると、駅前に立地するビルとビルの間に、雷也は立っていた。


 携帯のカメラをこちらに向けて、親指をオレに立てた。バッチリ撮影も終えた様子。


 雷也は、あの葵と初めて会った夜の公園で、オレに話していた。


『なぁ、どうして連中は普通に充電させてくれないんだ?』


『このタイプの携帯電話は、パソコンとも簡単に繋げる事が出来る。おそらく他の端末へ携帯を繋ぐ事を嫌がっている。だからわざわざ届けてまで渡してくれると思うんだ』


 その言葉通りなら、外部接続はしてないし、バッテリーの中を少しいじっても関係ないはずだ。

 
 仮に壊した所で、オレ達の中の誰かが死ぬことはまずない、そう判断した。


 このバッテリーは小型といえども掌サイズはある。



 『盗聴器』の一つくらい隠せるさ。